「空港グランドハンドリング協会 政策提言」を策定しました。
空港グランドハンドリング協会 政策提言
一般社団法人空港グランドハンドリング協会
2026年1月

はじめに
訪日外国人が増加してきた2010年代後半から、航空機の運航に欠かせない空港の業務が注目されはじめ、航空局が主催する有識者会議「持続的な発展に向けた空港業務のあり方検討会」が2023年6月に公表した「空港業務の持続的発展に向けたビジョン中間とりまとめ」において、グランドハンドリング(以下グラハン)をはじめとする空港業務は、航空機の運航に不可欠な業務であり、この業務を持続可能なものにしていくためには、需要の動向を見据えつつ、空港業務を支える担い手を安定的に確保してイノベーションを推進することが重要であ
り、地方自治体を含む官民の空港関係者が連携して取り組む必要があるとされました。
このとりまとめを受け、2023年8月に設立した私たち空港グランドハンドリング協会(以下「空ハン協」)は会員事業者が連携し、業界共通課題の解決を通じ事業者の経営基盤の強化を図り、航空産業におけるグラハン業界の持続的発展および日本経済の発展に資することを目的として活動をしており、2024年度には目指すべき魅力ある業界像として、空ハン協ビジョンとバリュー(巻末に掲載)を定めこれらの実現に向けた取り組みを強化しております。
2023年以降の航空需要の急激な回復をうけ、関係のみなさまのご支援も受け、コロナ禍で影響を受けたグラハン業務の回復に努めて参りましたが、現在国策として目標に掲げている 2030年訪日外国人旅行者数6000万人という目標や国際航空貨物の輸送力強化の達成、その後の観光立国の実現のためには、グラハンの機能をさらに持続的なものにしていく必要が あります。
しかしながら、空ハン協がこれまでグラハン会員事業者から集めてきた声を集約すると下記のような現状が見えてきました。
- 各空港が目指す将来像が明確でなく、突然の計画の変更に翻弄され、グラハン各社が経営の難しさに直面している。
- グラハン各社の従業員の処遇改善に直結する航空業界内の適正取引の浸透、実践はまだ道半ばの状況である。
- 従業員の定着に欠かせないはずの空港の労働環境の整備が遅れている。また老朽化が進む空港施設や機器はグラハンのニーズにスピード感をもって対応することが難しい。
- 便受け入れの拡大に向けて人材確保の困難さが継続、その対策の一つとして期待され る外国人労働者の雇用受入れに伴い諸問題が発生し、早期戦力化の妨げとなっている。
- 生産労働人口の減少に備え、人に頼ったハンドリングからDXを活用した生産性の高いハンドリングヘの脱却を図るも、DX導入のためのインフラの不足、現場に実装すべきDXの具体策の不在や、先進技術の費用の高さに直面している。
- 地方空港の現状が厳しく、国内線専従空港のグラハンは事業の継続に不安感を持っている。今後の訪日外国人の地方誘客のためには国内のネットワークの維持も重要である。
これらの現状はいずれもこれまで、グラハン各社が折に触れ訴えてきたものですが、課題が複雑に絡みあっており、グラハン個社での解決は難しく、なかなか進展がないのが実状です。
本提言書は、上記のようなグラハンの現状を変えていくための課題を明確にして一つ一つ解決していくことで、グラハン業界が持続的に成長・発展し、その社会的価値を一層高め、ひいてはそこで働く人たちが誇りをもって仕事をするという空ハン協ビジョンを実現することを目的としています。
目的達成に向けて、国や地方自治体、空港関係者をはじめとする多様なステークホルダーと緊密に連携しながら、具体的かつ実効性のある政策・施策の立案と推進を図ってまいりたく、みなさまのご理解とご支援をお願い致します。
1.グラハンの課題認識
グラハン業界は依然として複数の構造的かつ緊急の課題が山積しておりますが、会員事業者の声を踏まえ弊協会は以下6点を、早急に着手するべき課題と認識しています。
課題1:2030年訪日外国人旅行者数6000万人達成、国際航空貨物の輸送力強化に向けて
目標として掲げられている訪日外国人旅行者数6000万人や国際航空貨物の輸送力増強ですが、こうした目標が国内のそれぞれの空港でどのような形で達成されるかという絵姿は未だ描かれていません。こうした計画策定の遅延により、グラハン各社の将来戦略に不透明感が生じています。
課題2:グラハンの経営の健全化に向けて
「グラハン各社の経営の健全化」が業界の持続可能性を左右しています。業界内での過度な価格競争はグラハン各社の経営基盤を弱体化させ、ひいてはグラハン業界全体のサービス品質低下や安全リスクの増大を招きかねません。航空業界全体での適正取引の浸透を図り、各企業が健全な経営を続けることが重要ですが、グラハンの適正取引はガイドラインが策定されたばかりであり、その周知、活用、浸透、実践はこれからの状況にあります。日本に就航する外国の航空会社にも、適正取引にかかわる理解を求めて いくことも重要です。
課題3:従業員が働きやすい空港作りに向けて
空港における労働環境が数十年来変わっておらず、グラハン全体の人員増や、特にランプにおいて顕著な、女性・外国人従業員の増加に合わせた施設の改修が追い付いていません。また昨今の気候変動に伴う熱中症リスクや雷・ゲリラ豪雨など自然環境の悪化はグラハンの作業現場の安全を脅かしており、人材確保のためにも従業員の命を守る職場環境の早急な改善が全国的に求められています。
課題4:空港受入環境整備のための人員の確保に向けて
訪日外国人旅行者数6000万人という目標は現在の1.5倍の数であり、この数を受け入れる空港現場を支えるには、人材確保は引き続き重要です。業界挙げての人材採用にかかわる支援を続けていく必要があります。またグラハン各社の一部では人材不足解消の一策として外国人労働者など雇用ソースの拡大なども検討しています。外国人労働者の雇用においては、日本国内の制度により採用後の資格取得に時間がかかることも課題として見えており、早期戦力化のための制度の構築が急がれます。
課題5:生産性向上に向けて
グラハンの生産性向上には、デジタルトランスフォーメーション(DX)が不可欠ですが、現在、グラハン現場は依然として、人による作業に頼り、省力化や自動化のためのDXの浸透が著しく遅れており、生産性向上の機会を逸しています。この背景には老朽化した空港施設や電源・通信等のインフラの未整備といった問題がありますが、これらの問題の解決の道筋はみえていません。
また電源については今後グラハンで使用する車両の電動化等、脱炭素化推進にとっても重要な投資要素であり、2050年のカーボンニュートラル達成に向けた、グラハンの長期的な環境負荷軽減には欠かせないものとなります。
課題6:地方空港維持に向けて
グラハン人員の不足、採用困難という状況は特に地方空港で顕著で、当該空港のグラハンからは事業継続への懸念の声もあります。今後の訪日外国人旅行者数6000万人の達成のためには地方誘客も重要であり、地方空港の維持、国内線ネットワークの維持に配慮していく必要があります。人員確保のための採用の支援や、従業員の定着にかかわる支援、また少ない人数で地方グラハンの機能を維持するためにも、DXの積極的な展開と費用面の支援を検討していく必要があります。
これら6つの課題は相互に関連し複雑化しているため、単一の施策やグラハン個社での解決は困難です。将来的な航空需要増加を見据えつつ、国や地方自治体、空港運営事業者、グラハン各社が連携して一体的な対応を図る必要があります。
2.空港グランドハンドリング協会の政策提言
これまで示したグラハン業界の6つの課題に対して、以下の通り空港グランドハンドリング協会の「提言」を述べます。
提言1: 2030年訪日外国人旅行者数6000万人達成、国際航空貨物の輸送力強化に向けて
- 空港ごとの明確な将来ビジョンが明示されておらず、需要規模の伸びに応じた人材、器材の確保や業務効率化、さらには貨物取扱の高度化対応が計画しづらい。
2030年訪日外国人旅行者数6000万人達成は、日本政府が掲げる重要な国家戦略の一つであり、訪日観光消費の拡大と地域振興に大きく寄与することが見込まれています。また航空貨物分野においては国際競争力向上のため、首都圏空港を中心とした貨物取扱機能の強化なども検討が進んでいます。
これらの戦略の実現を支えるインフラである空港のグラハンを適時適切に確保するため に、国や空港会社等は空港ごとに訪日外国人受け入れの目標を明確化し、その達成に向けた計画を策定、公表し、設備投資や改修を進めることで、空港の関係者の意識統一を図る ことが必要です。また国内航空会社やグラハン各社も空港ごとの計画に基づき中長期的な設備投資や人材配置計画を連携して推進することはグラハン各社の経営の安定にもつながります。
- 空港ごとに航空局、自治体、空港会社、航空会社、グラハン事業者が連携する会議体
(例:空港ワーキンググループ)の設置を促進し、空港内の情報共有を定例化して、課題解決に向けての動きを活性化すべきです。 - 空港会社、空港ビル会社等を中心に、空港ワーキンググループ等での議論を踏まえながら国内各空港の中長期事業計画(マスタープラン)の策定を進め、その計画の進捗についてもグラハン事業者に共有することを定期的に実施することが必要です。
【空港運営各社の事業計画(旅客数/貨物量目標)の例】
(Webにて確認できるもの~空ハン協調べ)
- 各社ごと発表方法もバラバラで、長期の目標を示しているところは少ない。
- さらにコンソーシアム以外の空港では、中期目標は対外的に明示されていないところが多い。

提言2:グラハンの経営の健全化に向けて
- 国内線の収益性が悪化するなか、委託費の値上げが難しくなり始めている。
- 外航を誘致する際、行政や空港ビル会社などの誘致主体は、グラハン側に受託体制作りを強く求める一方、撤退や減便時の負担はすべてグラハン会社が負う構造にある。
「グラハン業界全体の適正取引のさらなる実践」
空港のグラハン業務の受委託関係は、二次、三次委託と多重構造化しており、航空会社と一次委託先だけでなく、各層における契約においても、適正取引を実現し、各社が健全な経営を継続できることが必要です。今般、国により策定された「空港グランドハンドリング事業適正取引化ガイドライン」(以下「適正取引ガイドライン」)のより一層の周知、浸透とその実践状況の継続的モニターが必要です。
「外航応需能力の拡大と外航減便/撤退リスクの分担」
空港は観光や物流の面で地域活性化に貢献する重要なインフラであり、外航便ハンドリングの増加は地域経済効果を最大化することができます。そのため、各空港において公正で透明性の高い取引環境の整備は欠かせず、外航においても適正取引ガイドラインを周知し理解を得ていくことは業界全体の健全な発展に資するものとなります。
一方、外航便の減便や撤退に伴うリスクは、航空会社やグラハン各社の負担となっていることは長年の懸案となっています、外航便の突然の減便や撤退は、グラハン事業者にとっては、会社の経営に長く影響する損失をもたらすこともあります。外航の就航が地域経済にもたらすものを考えれば、外航の減便・撤退リスクについて、国、自治体、空港会社と共有し分担する仕組みの構築は、安定的で持続可能な空港運営に資するものです。
- 国内のグラハン事業者(二次委託先等も含む)や航空会社(外航を含む)向けに定期的な説明会や研修を開催し、「適正取引ガイドライン」の浸透、実践を促す取り組みが求められます。
- 外航への「適正取引ガイドライン」周知については各空港にて組織されているAOC (Airline Operators Committee)との連携を強化することも重要であると考えます。
- 自治体や空港会社等を中心に外航減便・撤退時のリスクを分担する枠組みを導入す ることが必要です。また国においてもその枠組み導入を促進するための検討が必要です。とりわけ、地方空港では先行事例を参考に、自治体や空港会社等が積極的なグラハン支援体制を確立し、外航応需能力の底上げを図るべきです。
提言3:従業員が働きやすい空港作りに向けて
- 実作業に係る熱中症対策や防寒対策は自社努力で対応しているが、施設面は自社のみではどうにもならず空港会社、空港ビル等の協力が必要。
- 沖スポットには、休憩する場所やトイレなどが整備されていない。
- 改修したばかりの施設で、カートの扉が天井にぶつかる等の事例もあるなど、グラハン側に事前の意見聴取がなく、作業者の視点に立った施設設計になっていない。
- ターミナルにおいては、既にスペースに余裕がなく、新たに借りられる部屋がない。
- 空港ターミナルは開港当時の旅客数、貨物量の想定に合わせた作りになっており、乗降客数、貨物取扱量の増加に対応していない。
「従業員の命を守るための空港内共用施設の整備」
日本の気象庁の観測データによれば、夏季の真夏日・猛暑日の頻度は全国的に増加傾向にあり、従業員の熱中症リスクも顕著に高まっています。
【猛暑日の長期変化傾向例】
また、ゲリラ豪雨や急な雷の脅威の増加も見過ごせません。昨今環境の変化を踏まえ、従業員の命を守るための施設は、空港の基本設計に含めることが必要です。また当面の対 策で、熱中症予防や避雷対策のため空港内に冷房付きのトレーラーハウスを活用した休憩所を設置し、従業員の安全な休息環境を確保する試みが始まっていますが、こうした取り組みを急ぎ他空港にも波及することが望まれます。
「誰にも働きやすく、安全な職場の実現」
多くの空港では、昨今の取り扱い便数の増加に伴い、グラハンの従業員が増えてきましたが、空港施設内のスペースの不足から、更衣室や食事場所などの基本的な施設の確保が追いついておらず、グラハン事業者からは職場環境の改善が必要との現場の声が多く聞かれます。またBHS等グラハン現場の施設・備品の現行の配躍が作業の効率化の妨げとなる事例もあります。こうした課題はグラハンの作業者の視点での安全性、快適性や作業の効率性を考慮した空港の施設設計がほとんど行われてこなかったことによるものであ り、結果、最近になって施設が新設されたにも関わらず、現場にとって働きにくく、効率が悪い環境が作られることもあります。施設の課題は一朝ータには解決しないので、空港会社等がグラハン現場の声を聴きながら、空港ごとに現状の課題を整理し、計画を立て、進捗を管理し現場にもフィードバックしていく体制を構築することが必要です。
- グラハンの従業員の命を守るため、昨今の気象状況の変化を深刻にとらえ、国や空港会社等は、空港ワーキンググループ等の会議体での議論を経て、空港ターミナル、ラ ンプにおける共用休憩スペースの設置数、適切な設置場所等を定め、しっかりと導入を進めていくことが必要です。または国は共用スペースの設置費用に対し、現在設定されている補助金の継続をお願いします。
- 各空港において安全・快適かつ効率的な作業が実施できる労働環境創出のため、空港会社等は中長期にわたる空港施設の改修・拡張計画の策定をお願いします。計画の進捗状況については空港ワーキンググループ等の会議体にて、随時グラハン事業者に共有するなど、課題を解決していく動きを活性化することが必要です。また環境改善に向けては、国・自治体による改修費の補助が求められます。行政によるこうし た制度的支援は、労働環境の均質化を促進し、業界全体の人材の確保や採用競争力を強化し、結果として、持続可能な空港グラハン体制の構築につながります。
- 将来構想に向け新たな旅客ターミナルや新貨物地区の検討が進む成田空港は、従業員が安全で働きやすい空港を実現するための格好の事例であり、提言5にあるDX の実装も考慮し、作業の省力化、省人化も図れる将来のあるべき空港ターミナルや貨物施設のモデルケースとなることが期待されます。また他の空港でも国際線関係施設の増強などが行われる計画がある中、今後の新たな施設、設備の検討、設計にあたっては空港の将来計画を見据えた余裕のある空港施設を計画するとともに、航空会社やグラハン会社の現場の意見を積極的に取り入れるべく、関係者とのコミュニケーションを密にしていただくようにお願いします。
提言4:空港受入環境整備のための人員の確保に向けて
- グラハンの厳しい労働環境のイメージが先行していて採用に繋がりにくい状況。
- 外国人労働者は働く意欲は高く、貴重な戦力であるが、免許課題等もあって活躍の幅が限られている。
- 外国人労働者の定着には住居問題、日本語教育などに課題を感じている。
「継続的な人材の確保」
航空業界を支える基盤として、継続的に空港グランドハンドリング業界が質の高い人材を確保するため、自治体や空港会社等と連携しながら、学生への認知度向上施策や採用支援を実施していくことが必要です。また採用応募者が、職場を一見して、こうしたところで働きたいと思えるような職場環境を整え、若年層や女性、萬齢者など多様な人材が魅力を感じる職場づくりをしていくべきです。
「外国人労働者のグラハン現場での早期活躍」
近年の労働人口減少や産業の国際化に対応して、外国人労働者の受け入れは人材不足に対する有効な手立ての一つです。国土交通省の調査によれば、グラハン業界における外国人労働者の数は徐々に増加していますが、生活環境の整備、職場環境の調整、資格の取得など課題も多い状況下、外国人労働者の早期戦力化は業界の競争力維持・強化に不可欠であり、そのための支援体制が必要です。
【航空分野における特定技能在留外国人受入人数の推移】グラフ出典:航空局資料

- 国・自治体・空港会社等にて、空港人員の継続的な人材確保に繋がる採用支援策をお願いします。東京などで実施している航空業界仕事体験のイベント等、大学生や若年層への直接的なアプローチにより業界認知度向上を図る事例は、実際に成果があがっております。
- 自治体や空港会社等には、グラハン事業者とともに地域の教育機関や専門学校との連携強化を通じ、児童・学生がグラハン業務に必要な技能や知識に親しむ機会を作ることへのご協力をお願いします。労働市場におけるグラハン候補者層の拡大と質の向上が期待されます。
- 外国人労働者の雇用をグラハン各社がさらに積極的に活用するため、職場での早期戦力化ができるよう、空港内車両運転許可に代表される資格の取得制度の変更や、 試験、空港規程の多言語化などは、全空港で早急に実施していくべきです。また外国人雇用に関わる教育、訓練や空港運転資格の試験、特定技能試験等の実施頻度をふやすこと、共同の教育、訓練の施設を設置することは、早期戦力化に資することから、その費用について、補助できる枠組みが求められます。
提言5:生産性向上に向けて
- 人手を多く介するグラハンの変革にはDX推進が重要。国内線の収支が厳しいなか、さらなる効率化が求められる。
- 中長期的な課題であるが、先進機材は海外製が主であり納入時期と台数・修理コスト等にも課題が大きく、また空港施設環境にマッチしない機材も多い。国の補助先は国内メーカーヘの開発補助と空港運営会社側への先進機材のマッチした空港施設開発の両輪で進める必要がある。
「DXによる現場の省力化、省人化の推進」
多様なグラハン事業者が個別にDX推進を行う現状では、開発コストやシステム間連携の課題により、短期間で目に見える成果を挙げることは困難です。グラハンの現場が広く活用できる技術開発に支援いただくことが必要です。またDXに必要な高速通信環境や安定した電力供給は空港施設全域で十分でなく、空港のインフラ増強について、計画的な実施が必要です。特に電力については、DXだけでなく、脱炭素化のための車両の電動化 等、将来の電力需要の爆発的な拡大を見据えた早期計画、対応が今すぐにも必要と考え ています。
また日本国内の成田空港や関西空港でも電動牽引車や電動トーイングトラクター等、EV
車両の導入が進みつつありますが、さらなる導入のため、適切なコストで、誰もが利用しやすい場所への共用の充電設備の整備が求められます。
- グラハン個社では難しいDX技術の研究開発に関して、現在「空港グランドハンドリング作業の生産性向上に関する技術検討会」にて実施されているような、国を中心とした開発検討や実証実験を拡充し、グラハン業界全体のDX推進を促すことが求められます。
- 空港会社等は空港インフラの強化として、空港全域への5Gネットワーク整備や空港全体をカバーする空港内の業務用WIFIなどの設置を促進することが重要です。これにより、自動運転車両の安定的な運航、遠隔操作、リアルタイム監視などが可能となり、作業の安全性向上や効率化を支える通信インフラが構築されます。
- EV導入をはじめ空港の電力需要の増加に対応するため、空港の事情を考慮しつつ、脱炭素に資する再生可能エネルギーを活用した電源の導入促進なども検討すべきです。
- 国・空港会社等はEV導入促進のため空港共用のEV用充電設備について、既に航空会社、グラハン会社で導入されているEV車両の仕様を確認しつつ、充電プラグの形式などの標準仕様の策定を検討すべきです。またEV化の阻害要因となっている充電インフラ不足や設置コストの高さ、耐久性の課題などを解消する取り組みが必要です。
- 空港ごとに官民連携による関係者ヒアリングを通じて、国や自治体、空港会社等は空港で脱炭素化のために将来必要な電力量を算定し、それを確保するために必要な投資計画と進捗管理をすることが必要です。
提言6:地方空港維持に向けて
- グラハン人員の採用の困難な状況は地方空港でより顕著になっている。
- 採用した人員が長く定着してもらえるような、環境面での支援も必要である。
- 特に離島空港は将来的にも人材確保が困難な状況は続くので、省人化をはかる技術の導入が不可欠であるが、費用対効果の観点で技術の現場への実装が後回しになっている。
「国内線の維持・活性化」
日本の地方空港や離島空港における国内線路線の活性化は、国民の移動利便性の維持・向上に直結する重要な課題です。これらの空港は、人口希薄地域における重要な交通インフラでもあり、医療・観光・物流・行政サービスを含む多様な社会機能を支えるものとして維持していく必要があります。現在空港への補助・支援は訪日外国人旅行者数6000万人を踏まえた国際線就航空港向けがほとんどですが、国内線ネットワークの維持、訪日外国人の地方誘客なども考慮すれば、地方空港の人員確保の取り組みへの支援や、地方空港の規模にあった効率化策・省人化の技術の開発・導入への支援は必要と考えます。
- 今後訪日外国人のさらなる受け入れを進めるにあたっては、外国人の地方誘客を図るため、国内線の維持活性化に資する施策を展開することが必要です。具体的には、国内線のみが就航する地方空港のグラハンが活用できる費用補助を設定するほか、大空港で実装された省人化のためのDXの技術を、地方空港に早期展開するための費用面の支援などの政策を集中的に推進し、地方空港に効率化と利便性向上が両立する環境整備を図るべきです。
3.まとめ

(参考)空ハン協ビジョンとバリュー
【空ハン協ビジョン】
私たち空港グランドハンドリング協会ならびに会員各社は、航空産業の成長を通じて日本経済の発展に寄与し、従業員が誇りをもって働くことができる業界を目指します。
【空ハン協バリューと行動指針】顧客満足
・エアラインやフォワーダーなど、グランドハンドリングがサービスを提供するパートナーとともに、最高の業務品質を航空や空港を利用するお客様にお届けできるよう、改善に取り組み続ける。
従業員満足
・グランドハンドリング業界で働く「人」が産業成長の源泉。従業員を大切にし、選ばれる業界を目指し続ける。
企業成長
•航空産業およびグランドハンドリング業界の持続的発展に向け、グランドハンドリング各社が成長できる環境づくりに取り組む。
安全堅持・コンプライアンス遵守
・グランドハンドリング協会の健全な成長を実現する根幹として、協会全体で一丸となって取り組む。

